本研究は、10-100GW程度のレーザー(光強度はTW/cm^2)を二光束干渉させることで生成できるプラズマの周期的空間密度分布を過渡的なダイナミックホログラム(「プラズマホログラム」)として記録し、1TWを超える高強度レーザーパルスで再生することで、高強度レーザーパルスの波面、スペクトル時間発展、パルス波形という時空間にわたるあらゆるパラメーターを高効率にかつ自在に制御する革新的な研究分野「プラズマホログラムによる高強度レーザーシンセシス」を開拓しようとする挑戦的研究である。 平成21年度は、高エネルギーピコ秒パルスレーザー(10ps、5-10mJ、1064nm)を用いてガラス基板ターゲットに集光し「プラズマホログラム」を記録した。この時、プラズマ密度の空間変調度とその緩和時間を測定するためのプローブ光を同時に入射し、プローブ光の「プラズマホログラム」による回折光の強度を測定した。ホログラムの回折効率は数%であった。レート方程式によりアブレーション時に発生するプラズマ密度を計算し、ドルーデモデルと結合波方程式から回折効率を計算したところ実験と良く整合した。 また、高エネルギーナノ秒パルスレーザーを光渦に変調し、光渦によるレーザーアブレーションを行った。アブレーション加工された金属表面のデブリが軌道角運動量の効果により低減することがわかった。これは軌道角運動量を受けたプラズマが光渦の位相特異点近傍に閉じ込められ、効率よく金属ターゲットから離脱することによると考えられる。
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