研究概要 |
光パルス励起反強磁性体NiOからのTHz波放射現象を応用し,ダブル光パルスによる放射THz波のコヒーレント制御を実現した.光パルスによって励起されるマグノンの周期は室温で約1psであるが,周期の整数倍の時間間隔で2つの光パルスを照射すると2つ目のパルスによりマグノンから放射されるTHz波の振幅を倍増した.光パルスの間隔を半周期ずらすことで1つ目のパルスで放射されたTHz波が2つ目の光パルス照射により消滅することを確認した.一方,照射する光パルスを円偏光にし,そのヘリシティーを切り替えることで放射されるTHz波の極性が反転する現象を見出した.ダブル光パルス励起に加え,円偏光ヘリシティー切替を用いることでTHz波及びマグノンのより多彩なコヒーレント制御が可能になった. 光照射によるマグノン励起機構は未だ明らかでないが,円偏光ヘリシティー切替によるTHz波及びマグノンの極性反転現象は励起機構として逆ファラデー効果が支配的であることを示唆する.一方,直線偏光光パルス励起でもマグノンが励起されTHz波放射が観測される.放射THz波の偏光依存性を解析することで,NiOの線形磁気複屈折によって直線偏光励起光が円偏光に変換され逆ファラデー効果が生じ,これにより発生した磁場パルスによりマグノンが励起されることがわかった. さらにMnOについて光パルス励起マグノンからのTHz波放射を初めて見出した.NiOとスピンの長さが異なるMnOからもマグノンが励起されることは,マグノン光励起機構を解明する上で重要な知見である.
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