本研究では流体中に分散させた導体微粒子に対し、変動磁場を印加することにより粒子を回転させ、このとき粒子間に働く流体力学的な斥力と磁気モーメント間引力の制御により、デバイスなどに利用可能な高い秩序を持つ結晶構造を自己組織化的に実現する技術を確立することを目的とした。これによりフォトニック結晶や弾性波制御格子構造などのマイクロ周期構造の生成を目指して研究を行った。今年度は自己組織化的配列構造の作製に寄与するふたつの相互作用について、予備実験及び数値シミュレーションからその大きさ、到達時間などの性質を決定し、より微細な周期構造を作製するために必要な条件を定めた。この結果下記の2項目について知見を得た。 まず自己組織化周期構造の微細化については、昨年度に作製した装置を用いて、数μm程度の構造周期をもつコヒーレント長数mm以上の2次元粒子配列を実現した。四重極電磁石により従来の10mT程度の磁場を10倍程度に、また現在10回転/秒程度の回転数を100倍程度へと性能向上を図ることにより格子定数の異なる六方晶構造を見出すことができた。 さらに流体相互作用の流体力学的考察からの検証を試みた。流体力学的斥力は周辺の媒質の流れに伴って生じる。この流れに伴う力の距離依存性について、粘性による効果とストークス流による圧力勾配の効果を比較し、その距離依存性を解析的に検証した。これにより、斥力相互作用の罧即が導かれ、結晶の長距離秩序を発現させるための条件が求められた。
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