本研究の目的は、(1)素子作製プロセス技術の確立、(2)ピエゾ発電素子作製と原理実証実験にある。当該年度では、1)ナノ構造スプリング形成、2)ZnO-スプリング構造群集積構造作製の最適化を行った。実際の実験研究では、研究では、明確なZnOナノ・ロッドの正ピエゾ効果は確認されなかったが、電極用導電性高分子とZnOナノロッドの接合技術を新たに考案できた。 具体的には、ZnOナノ・ロッドと電極の溶着として、上部電極材として、柔軟な形状を持つ導電性高分子を検討し、導電性高分子とナノ・ロッドの接合実験を行った。加熱接合、薬剤による溶融接合等を試したが、紫外線レーザー・パルス光を用いることで、強固に、しかも所望の箇所を接合できることがわかった。実験は、イオン性導電高分子として広く使われているデュポン社ナフィオン117を上部電極材として用いた。配向成長したZnOナノ・ロッド群の上に、ナフィオン117フィルム(膜厚0.1mm)を敷き、ナフィオン側からNd:YAGレーザーの第三高調波・波長355nmのパルス光(パルス幅8ns、繰り返し周波数10Hz)を照射することで、接合することができた。ナフィオン117の光学的バンドギャップは7.29eV(換算波長170nnm)であり、波長355nnmの紫外光は透過する。一方、ZnO単結晶のそれは3.37eV(換算波長368nm)であるが、ナノ・ロッドの先端では、レーザー・パルス光の電界集中が起こり、ロッド先端が溶融することが確認された。この効果により、ナフィオンフィルムとロッドの界面で溶着、すなわちナノ・ロッド固有の現象を見いだすことができた。ZnOナノ・ロッドと高分子(イオン導電性のナフィオン)との接合は、従来、メッキ法により数10ミクロンの厚みの金属を使っていた電極形成法を、さらに薄く、高効率の高分子膜の電極形成法、セラミックスと高分子の接合法に発展することが可能であり、生体材料分野等への展開が期待される。
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