研究概要 |
1. 漸近解析 (a) 流体力学的方程式の導出:静止平衡状態からのずれが小さい系を考え,線形化ボルツマン方程式をもとに,物理量の変化の尺度が気体分子の平均自由行程に比べて十分長い場合について系統的漸近解析を行うことにより,流体力学的方程式を導いた.とくに多成分混合気体に焦点を合わせて研究を行った.この流体力学的方程式は,境界近傍を除いて大域的に成り立つものである. (b) すべりの境界条件の予測:境界温度が不連続である場合のすべりの境界条件の形を予想するために,そのような問題をボルツマン方程式およびそのモデル方程式をもとに,数値的に調べた.とくに,不連続点付近の流れの場が,境界から遠ざかるとどのように変化するかを調べ,境界温度をフーリエ分解して最初の数項を取ったものに通常のすべりの境界条件を適用した結果と比較した.この研究は平成22年度に継続して行う. 2. 数値解析 境界が先端をもつ場合に,先端がどのようにまわりの気体の流れに影響を与えるかの研究に着手した.具体的には,有限領域(箱)の中におかれた平板の両面あるいは片面が,箱より高い温度に保たれている場合を考え,平板の先端付近に誘起される気体の流れを数値的に調べた.数値解法としては,ボルツマン方程式に基づく直接シミュレーションモンテカルロ法(DSMC法),およびモデルボルツマン方程式に基づく差分法,を用いた.本来の目的はクヌーセン数が小さい場合を調べることであるが,その予備段階として,計算がし易いクヌーセン数が大きい場合について数値計算を行い,計算が精度よく行われていることを確認した.本格的計算は平成22年度に行う.
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