研究概要 |
本年度は以下の成果を得た. (1) 離散可積分系の理論の整備 離散可積分系に関して知られている成果をまとめ,レビューを「可視化の技術と現代幾何学」という書籍の1章として出版した.また,離散可積分系の理論と離散微分幾何の知識を周知するため「離散可積分系・離散微分幾何チュートリアル」を企画して自らも講演し,100名以上の参加を見た.チュートリアルのウェブページに上記書籍より詳細な情報を掲載し,研究者の便宜を図っている. (2) 不均一格子上の離散可積分系の理論の展開 不均一格子上のτ函数を取り扱う技法をほぼ確立し,離散KdV方程式,離散mKdV方程式,離散ブシネスク方程式,離散ロトカ・ヴォルテラ方程式などの離散ソリトン系の不均一格子への拡張(半無限格子上のいわゆる「分子解」を含む)を得た.また,離散微分幾何,特に離散正則函数の理論で重要で,双線形構造がよく知られていなかった離散Schwarzian KP方程式およびcross-ratio方程式を考察して双線形化に成功し,不均一格子への拡張とさまざまな厳密解を構成した. 以上の結果を離散微分幾何に応用するべく研究を進め,現在,平面上の離散曲線を統制する偏差分方程式とそのさまざまな厳密解,および曲線のベックルント変換を構成することに成功した.さらに,離散正則函数の理論に離散Schwarzian KP方程式に関する結果を応用し,離散ベキ函数に対して超幾何関数を要素とする行列式を用いた具体的な表式を得ている.
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