研究概要 |
本研究は,クリーンエネルギー車・ロケット等に用いられる水素エンジンの燃料噴射装置(インジェクター)用材料システムを取り上げ,微視構造の影響を考慮して,極限環境(極低温・高温・水素雰囲気)における圧電メゾ破壊・疲労挙動を理論・実験両面から解明するものである.本年度は,インジェクター用材料システム(多層圧電薄膜アクチュエータ等)の極低温における電気破壊・疲労挙動に影響を及ぼすと考えられる相転移をモデル化し,PZT結晶相境界状態図の解析を進めている.また,インジェクター用材料システムの極低温圧電メゾ破壊・疲労挙動に関する数値シミュレーション手法の開発も進めている.さらに,極低温におけるインジェクター用材料システムの電気破壊・変形に関する予備実験を行い,極低温破壊・変形挙動に及ぼす電場の影響についても検討を加えている.得られた成果を要約すると以下の通りである. 1.極低温における多層圧電アクチュエータのひずみ-電場曲線を理論・実験両面から明らかにした.実験は,クライオスタット内の圧電試験片にヘリウムガスを供給して行い,電場による試験片表面の伸びひずみを計測した.また,有限要素解析は,圧電定数の温度依存性(PZTの相転移に関する熱力学モデルを拡張)を考慮して行い,ひずみ計測結果に理論的検討を加えた.さらに,電場誘起ストークの温度依存性について解明・考察中である. 2.直流・交流電場下におけるインジェクター用材料システムの三点曲げ破壊・静疲労試験を行い,破壊荷重・破断時間に及ぼす電場・周波数の影響を解明して,興味ある結果を得ている.また,圧電破壊・疲労挙動の温度依存性解明を目指し,基礎的研究を進めている.
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