研究概要 |
本研究の目的は,従来不可能であった,玉軸受の転動体である球の表面全体を短時間かつ高精度にデジタル画像化する画期的な装置を2年間で開発することである.本年度は初年度であるので,これまで開発してきた広視野レーザ顕微鏡を用いることとし,装置開発の可能性を探ることと,問題点を明らかにすることにした.本装置では,細く絞ったレーザ光を水平方向に高速走査する.レーザ光の結像線上に観察物を置くことで,レーザ光の線上にある物体の反射強度を測定できる.本顕微鏡は,既存のレーザ顕微鏡に比べて焦点深度が深いことが特徴である.観察象対の球面に一直線のレーザ光が照射された場合は,その一直線のある幅の球面しか焦点深度内に存在しないことになる.したがって,球面全体を観察するためには,球を回転させ,球面全体にレーザ走査線を当てる必要がある.そこで,球の高精度回転送り技術の基礎実験を行った.電動回転ステージ1を用いて水平軸を中心として球を一回転させる.これにより,赤道上の走査幅数mmに渡りデジタル画像を取得することができる.すなわち,広視野レーザ顕微鏡は共焦点系の光学系であり,同じ経度の帯状領域を画像化することに向いている.次に,回転ステージ2を用いて垂直軸を中心として球をある規定量だけ回転させる.これにより,球面上のレーザ走査位置を任意の緯度上に移動させることができる.したがって,2つの回転ステージの動きと同期させてレーザ走査を行うことで,焦点の合う経度を変化させながら観察を続けられ,球全体のデジタル画像化が行える.本年度は,プラスチック製の比較的大きな球を使って,上記の考え方で球面の半分が観察できることを検証した.また,測定した球面の表示方法として,DirectXとDelphiを用いて地球儀のような球表面の表示プログラムを開発した.その結果,球表面のキズを明瞭に表示できることが分かった.
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