研究概要 |
本研究は、潤滑油添加剤の摩擦面吸着挙動を、QCM(水晶振動子マイクロバランス)法を応用した計測システムを開発することによって明らかにすることを目的として研究を実施した. まず初年度には,溶液中QCM計測装置を用い,各種溶媒中における溶媒分子の吸着挙動測定を行い,QCM計測法の問題点や改善点を明確にした.次に,潤滑油基油のモデルとしてヘキサデカンを,潤滑油基油としてスクアランを用い,これらに油性剤であるオレイン酸,極圧添加剤であるTCPを添加することで,それぞれの添加剤の吸着量ならびに速度に及ぼす温度の影響を明らかにした.これまで,スクアランのような粘度の高い溶液中で吸着特性を調べた例がなく,当初は温度変動による粘度変化に起因したデータのばらつきが問題となっていたが,周囲温度を厳密に管理することにより,このような測定上の問題点を克服した.また,振り子式摩擦試験機を用いた動的な摩擦実験より,摩擦係数に及ぼすオレイン酸およびTCPの摩擦低減効果の温度依存性との照合を行った.その結果,添加剤の吸着と脱離挙動と摩擦低減効果との間に相関を確認した.さらに,QCMセンサーの電極材料に通常の金蒸着膜以外のニッケル,銅,カーボンなどを用い,表面材料の違いよる吸着挙動への影響を調べた.その結果,化学活性の低いカーボン表面では,オレイン酸,TCPともに吸着量と速度ともに低く,ニッケルでは吸着量はほぼ同じであっても,吸着速度に違いが見られるなど,表面と吸着分子との相互作用計測が可能であることを確認した.
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