研究概要 |
本研究では,感圧塗料(PSP)による気体流の二次元圧力計測法として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)技術を応用した有機EL-PSPを開発することによって,PSPによる計測精度を劇的に向上させ,PSPでは実現が困難とされている大気圧近傍での微小な圧力変化を計測する技術の確立を目的とする. まず,有機ELの手法による発光法の確立を目指し,有機ELとしては最も簡単な単層式を採用し,製膜能が高くかつ導電性の高分子をホスト材料とし,これをPSPとして利用されている感圧性の色素分子をゲスト材料として発光させる実験を実施した.その結果,ホスト材料である高分子層が発光する波長ではなく,色素分子が発光する波長において強い発光が確認され,有機EL-PSPの実現可能性が確認された.そこで,高分子と色素分子の混合比,有機層の製膜条件,陰電極層の蒸着条件など様々なパラメータに対して,発光時間や輝度の情報を基に更なる最適化を実施している. 次に,色素分子の選択及び基礎特性の評価のため,様々な色素分子に対して,基礎特性の評価を実施した.また,感圧塗料のみならず,感温塗料に対しても同様の評価を実施した.その結果,色素分子のみならず,バインダとして利用される高分子によっても特性が変化することが明らかとなった.有機ELにおいては限られた高分子のみが利用可能ではあるものの,これらの基礎データによって,有機EL-PSPとして実現するためのより良い色素分子と高分子の組合せが選択可能になると考えられる.
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