研究概要 |
秋の虫の鳴き音を規範とした快音化能動騒音制御システムを構築することを目指して,被験者に秋の虫の鳴き音の特性を変化させた人工合成音を聴かせて脳波計測を行い,心地良さに与える影響因子を抽出するとともに,基礎的な能動制御系を試作して,快音化制御実験を試みた.得られた結果は以下の通りである. (1) 人工合成音の作成 秋の虫の鳴き音の音圧振幅エンベロープを再現できるように,卓越周波数の正弦波電圧(Pulse),シラブル電圧(ES),チャープ電圧(EC)の三重積で構成される人工合成音をコンピュータプログラミング,D/A変換,増幅,スピーカで発生するよう作成した.さらに,この三重積による人工合成音の特徴パラメータとして,パルス周波数,シラブル周期,チャープ周期などの特徴パラメータを設定し,これらを自由に変えて任意の合成音を得た. (2) 音響心理実験 20才~30才程度の男女十数名を被験者として,前項の特徴パラメータを種々に変えつつ人工合成音を聴かせ,その際の被験者の脳波を生体信号収録装置により計測し,周波数分析を行ってα波成分を抽出し,快音の定量的評価量として定めた. (3) 心地良さを支配する因子の抽出 前項の音響心理実験で得られたα波の量と設定した音圧振幅エンベロープの特徴パラメータとの間の関係の統計的評価を行い,心地良さを支配する因子として,最適なチャープ振幅変化,チャープ周期,シラブル周期を派する周波数の関数として与える快音関数を求めた. (4) 快音化能動制御の基礎実験 前項で求めた快音関数を用いて,Filtered x-LMSアルゴリズムによる能動騒音制御系を設計・試作して,複数の周波数成分を持つ擬似騒音に対して,その卓越周波数から最適特徴パラメータを求めてそれらに同調させる2次音源出力を求めて快音化を行った.その結果,提案した手法により,高いエネルギー効率で騒音の改質が可能なことを示した.
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