研究概要 |
秋の虫の鳴き音を規範とした快音化能動騒音制御システムを構築することを目指して,被験者に秋の虫の鳴き音の特性を変化させた人工合成音を聴かせて脳波計測を行い,心地良さに与える影響因子を抽出するとともに,基礎的な能動制御系を試作して,快音化制御実験を試みた.得られた結果は以下の通りである. (1)連続音響心理実験 秋の虫の鳴き音を規範とした人工合成音を,その特徴パラメータ(快音パラメータ)を変えつつ被験者に聴かせ,その心地良さを脳波のα波の量で評価する音響心理実験を行うのに際し,静定のためのインターバルが実験時間消費することを防ぐためにインターバルなしで連続的に音を聴かせる実験を提案し,その精度検定を行った.インターバル測定と連続測定時の実験結果の相関は極めて高く,連続測定によっても心地良さを正しく評価できることがわかった. (2)快音パラメータの高精度探索と快音化能動制御 快音パラメータの高精度探索のために,被験者の数を限定して,連続測定による音響心理実験を行った結果,心地良さに支配的なチャープ周期が存在することが明らかになった.その最適チャープ周期に基づいてFiltered x-LMSアルゴリズムによる能動騒音制御系を設計して制御を試みた結果,騒音の改善効果があることがわかった. (3)実時間最適化を組み込んだ快音パラメータ探索と快音化能動制御 さらに,快音パラメータを高分解能で求めるために,心地良さに対応して試験する快音パラメータを自動調整する実時間最適化を組み込んだ音響心理実験を行った.快音パラメータを設計変数,脳波α波を目的関数としてシンプレックス法を適用した.その結果,3つの最適快音パラメータのなす平面が存在することが明らかになった.この快音平面に基づいて快音化能動騒音制御を行った結果,騒音の改質が可能なことが明らかになった.
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