研究概要 |
本研究は,人間とロボットの物理的・情報的インタラクションの負荷による人間のストレスを生理的指標に基づいて客観的に測定し,新たな設計指針を導出することを目的とした研究である.21年度は,(1)人間・ロボット協調系におけるストレス要因の体系化と(2)非拘束で簡便かつノイズの少ないストレス測定システムの構築を実施した. (1)では,ロボット協調に内在する何らかのストレス要因(精神的負荷)により,人間がストレス(精神的負担)を被り,その結果,可観測な悪影響を被る(減退的効果)という精神的負荷・負担モデルを構築し,負荷-負担-減退的効果の関係性を明らかにするため,産業用ロボットとの協調作業におけるストレス測定を実施した.ストレス測定には主観指標と後述する生理指標を用いた.その結果,ロボットによる作業者との物理的なインタラクション(物を手渡す,近づく)は,人間の精神的負担を大きくするが,そのときのロボット動作パラメータ(手先軌道や近接速度)を適切に設定することで大幅に軽減できることを明らにした.また情報的インタラクション(ディスプレイ・音声・光ポインタなどデジタルデバイスを用いた作業情報提示)においても,適切な情報支援は作業効率の向上につながるが,作業提示手法により,「ロボットに使われ,急かされる」といった新たな精神的負担を生じさせることを明らかにした. (2)では,ストレスを,脳波,fNIRS,心電,脈拍,血圧,α-アミラーゼ,皮膚電位,皮膚インピーダンス,フリッカーなど多種の生理指標を用いて評価した.(1)で実施した実験結果を多変量解析し,α-アミラーゼ,フリッカー,皮膚電位の3種の生理指標がロボット協調から被るストレスを簡便にかつ安定的に測定できることを明らかにした(計画を4カ月ほど延長し,データの精査と統合的な測定システムの構築を実施).またこれら指標を計測する装置の無線化を実施し,低拘束な計測環境を構築した.
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