昨年度、アウターロータ型の表面磁石モータを比較対象として、これに磁気ギアを内蔵したモータについて性能の評価を行ったところ、ギア比を2:33とすることで、従来の表面磁石モータに対して約2倍のトルクが得られることが明らかになった。ただし、単純にギア比で評価すると、トルクは16.5倍となることから、予想よりも得られるトルクは小さいことがわかった。 本年度は、まずこの原因を突き止めるため、有限要素法(FEM)の電磁界解析により、ギャップの磁束分布を詳しく調べた。その結果、磁気ギアにおいて、トルクに寄与する磁束成分は基本波では無く、高調波成分となること、そのため、振幅は基本波成分よりも著しく小さくなることが明らかになった。今後、高調波磁束を大きくできるギア構成について検討する必要がある。 次いで、永久磁石型磁気ギア単体の評価を行った。磁気ギアの性能に大きく寄与する、磁石長、ギャップ長、ポールピース長、極数の組み合わせについて、FEMを用いて種々設計パラメータを変更して比較を行ったところ、特に極数の組み合わせ(ギア比)を変えると、同体格であっても最大伝達トルクが大きく変化することが明らかになった。この結果をふまえて、今後はトルク密度を最大にする設計法の確立につなげる予定である。 また上記の考察に基づき、ギア比約10:1の磁気ギアを試作して実験を行ったところ、ほぼ設計通りのトルクが伝達できることを確かめた。今後は、伝達効率の評価など、さらに詳細な検討を進める予定である。
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