本研究では、ニューロン素子を模倣した学習型デバイス創成を目標に、その基本セルとなるMFS型電界効果トランジスタを開発するためSiトランジスタのチャネル直上に有機強誘電体を堆積し、入力パルスに応じた分極ドメイン形成とドレイン電流変調に挑戦した。P型Siウエハー(比抵抗1~10Ωcm)上にソース・ドレイン領域を形成し、チャネル部がむき出しになったトランジスタを試作した。強誘電体層として真空蒸着可能なフッ化ビニリデンオリゴマーを用いることで、可能な限り清浄環境下でSiと強誘電体の直接界面を形成した。最後にAlゲート電極を作製し、金属(M)/強誘電体(F)/半導体(S)キャパシタ素子とした。パルス電圧入力によるトランジスタ基板上での分極反転ドメイン形成を検証するため、電界-電流密度特性を測定した結果、非対称性ある分極反転電流ピークを観測した。負極性側の分極反転電流ピークはブロードかつ高電圧シフトしており、Si中での空乏層形成を示唆した。チャネル直上に形成した有機強誘電体の分極方向を上向き、下向きと変化させてドレイン-ソース間に流れる電流変化を測定した所、ドレイン電圧3V掃引に対して電流値のON/OFF比は約10^5倍であった。入力信号としてのゲート電圧パルスをパラメータとして実験した結果、データ保持特性は1000sec以下と短いものの極性に応じた電流挙動を確認できたことから、有機分極相互作用によるSi半導体変調の可能性を示し、パルス入力によるMSF-FET駆動に成功した。
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