研究概要 |
将来の光信号処理に必要となる100Gb/sから1Tb/s級の超高速化に向けて、基本素子となる超高速全光学型ゲート機能デバイスの実現が必須である。特に,光実装が簡単で、超大容量・多チャネル化にも対応できる、面型構造光ゲートデバイスの実現が急務である。本研究は、量子ドットと1次元フォフォトニック結晶とを組み合わせて非線形性の増強を行って、高効率、かつ面型構造を有する光ゲートデバイスを実現することを目的とする。本年度は、最適化した量子ドット光スイッチ素子の製作と新しい非線形評価システムによる特性評価を進め、以下の成果を得た。 (1)光スイッチの設計では、電子第1励起準位が1.3μm付近の長波長領域に対応する量子ドットを用い、また、この励起準位と基底準位との間のサブバンド間遷移に基づく超高速緩和を利用することとした。さらに、出力の最大化のために最適化を行った多層膜共振器構造(16/30周期)を採用した面型光スイッチを製作した。 (2)このデバイスの応答特性をポンプ・プローブ法により測定し、1.24μmの波長で、20psの超高速応答と、2.5fJ/μm^2の低スイッチングエネルギーを観測した。 (3)量子ドットの非線形性の評価を深めるために、マッハツェンダー干渉計配置を持つ位相変化測定系を構築し、デバイスの光励起時における位相変化量特性の詳細な評価を行った。その結果、励起エネルギー0.2fJ/μm^2における位相変化として18゜を観測した。これは面型光スイッチにおける充分大きい位相変化の検出に初めて成功したものであり、同時に量子ドット面型光スイッチが、さらなる超高速・低エネルギーの光ゲート動作に向けて有効なマッハツェンダー型光スイッチの製作に適用出来ることを実証したものである。 以上により、量子ドット面型全光スイッチデバイスの基本動作を実証するとともに、さらなる超高速・低エネルギーの光ゲート動作の実現可能性を明らかにした。
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