本研究は、回路的手法に基づく異方性メタマテリアルの媒質構成理論を確立し、電磁波の反射・散乱を広帯域かつ低損失に抑制する透明マント媒質の実現法を提案するものである。本年度は、まず2次元T型およびΠ型の2種類の回路に対して実効的な透磁率テンソルの非対角成分を回路素子値で制御することができるかどうか検討した。これらの回路に対して回路方程式とマクスウェル方程式との対応関係を理論的に計算した。いずれの回路構成においても、マクスウェル方程式との対称性を保つことは可能であり、対角成分は回路素子値により任意に決定することが可能であることがわかったが、非対角成分を非零とすることは不可能であることがわかった。次に、2次元T型回路の直交するxおよびy方向のポートを磁気的に結合させた、ポート結合型2次元T型回路を提案した。同様な回路方程式とマクスウェル方程式との対応関係より、本提案回路は、非対角項ポート間を、ポート間の相互インダクタンスMにより独立に表わすことが可能であることを理論的に示すことができた。さらに、上記理論では、TEモードの2次元伝搬波に対して、マクスウェル方程式の電界と磁界を回路の電圧と電流に対応させたものであるが、これと双対となる対応関係、すなわちマクスウェル方程式の電界と磁界を回路の電流と電圧に対応させる関係を与えることで、TMモードの2次元伝搬波に対しても本回路は記述できることを示した。この場合にはMは誘電率テンソルの非対角成分を表わすことになる。得られた等価回路に対してBloch-Floquetの周期境界条件を与え、この単位ユニットを無限に2次元に配列したメタマテリアルの分散関係式およびインピーダンスを解析的に求めた。 平成22年度では、得られた回路理論の妥当性をマイクロ波帯において検証する。2次元平面回路上に金属円筒を不可視とする透明マント媒質を設計し、実証実験を行う予定である。
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