研究概要 |
本研究は、研究課題名「低レイヤ低コスト高セキュアな通信プロトコルの開発」が象徴するように,廉価な各種ケーブルなどの「低コスト」な通信媒体を活用し,それら「低レイヤ」プロトコルにおける物理的性質などに基づき、「高セキュア」な情報通信を実現する秘密鍵共有法やプロトコルの開発を主要な目的とし,環境電磁工学の知見を活かすことにより至近距離での低レイヤ低コストな秘密鍵共有プロトコルを開発するとともに、共有済み秘密鍵を活用した遠距離での高セキュアな情報通信プロトコルを開発するものである。 本年度は,前年度に得られた成果をさらに進展させるため,ケーブルを使った安全な通信を保証する上で,特にケーブルの接続部であるコネクタとそれら周辺のコモンモード電流に着目し,スーパーコンピュータを使った電磁界計算等により,良好な通信を保つために必要となるコネクタの接触性能要件に関する検討を行った。加えて,セキュアな通信を実現するためには,秘密情報が機器外部に放射電磁波をサイドチャネルとして漏えいするようなことが起きてはならないが,通信に用いる信号強度によっては,秘密情報を含むコモンモード電流と背景ノイズの比率(SNR)が大きく変化し,情報が漏えいする危険性が生ずる恐れがあることから,SNRと情報の漏れやすさの関係を詳細に解析した。これらの成果により,低レイヤ通信媒体における高セキュア通信のための条件を確立した。 また,前年度までに定式化している秘密鍵の共有状況に関するモデルのもとで,共有済み秘密鍵を活用した遠距離での高セキュア通信プロトコルの効率を上げる手法を考案した。 以上の成果,および前年度までの成果により,低レイヤ低コスト高セキュアな通信に資することができた。
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