研究課題
本研究では、情報漏えい防止やプライバシー保護のため、暗号化された信号を復号することなく、暗号領域において様々な情報を担う信号を処理するための基礎技術について検討を行うことを目的とする。今年度の実施計画に対する研究成果は次の通り。1.信号処理の基本演算は積和演算で、一般に実数演算であるのに対し、暗号は整数演算である。信号領域の実数演算を有理数演算で近似し、積和演算の分子と分母を別々に計算することにより、整数演算に変換するための手法を与えた。これにより、信号領域の積和演算を暗号領域の冪積演算に対応付けることができ、加法的準同型性をもつ暗号の適用が可能になった。2.暗号領域における信号処理において重要な役割を担う準同型性暗号の調査・研究を継続して行った。特に、加法的準同型性をもつ公開鍵暗号Paillier暗号について研究を行った。前年度開発したPaillier暗号の鍵生成と暗号化、復号のプログラムについて引き続き検討した。暗号の安全性を更に高めるため、鍵の長さ(素数の桁数)をより大きくするなどプログラムの改良を行い、これをソフトウェアで実装し、動作確認および準同型性の確認を行った。3.暗号領域での検出が可能な画像への電子透かしの埋め込み法について検討した。整数型可逆ウェーブレット変換を用いて、複数個のウェーブレット係数の積和演算で透かしの検出が行えるように透かしの埋め込み処理を行う。これにより準同型性暗号の適用が可能となる。透かし情報の検出精度と透かし入り画像の画質を数値実験により評価した。4.暗号領域における信号処理の実験的検証を行うため、画像伝送システムおよび無線伝送システムの環境整備を行い、上記の研究成果を応用し、JPEG2000画像の暗号領域における認証システムを提案した。その結果を国際ワークショップ2011 International Workshop Smart Info-Media Systems in Asiaで発表した。
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Proceedings of the 2012 International Workshop on Advanced Image Technology
巻: Vol.1 ページ: 662-667
巻: Vol.1 ページ: 668-671
Proceedings of the 2011 International Workshop on Smart Info-Media Systems in Asia
巻: Vol.1 ページ: 57-60
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: Vol.E94-A ページ: 2358-2360