研究概要 |
本研究グループはtime-shift図法を開発し,脳波伝播解析を世界に先駆けて行った.そこでは,様々な情報が脳内各部に伝達される状態が示された.本研究では,脳構成論の立場から,記憶の基本はループ回路であり,このような経路の探索・形成がHebb則に従う神経回路で可能であり,記憶,連想,抽象化,記憶の再構成など脳情報処理の基本機能が,単純な経路形成のみで統一的に説明され,生理的・神経回路的に実現可能であることを示す 平成22年度においては,回路自体(ハードウェア形態)の学習,すなわち回路形状が転写可能であるかどうかの検証を行った 本研究においては,代表的な学習アルゴリズムである誤差逆伝播アルゴリズムを用いた.シミュレーション実験により,送信側ループ回路から出力されたパルス系列を用いた学習によって,同様の出力をもつ受信側ループ回路を形成することが可能であることが示された.これにより,任意の記憶内容が適切な領域に伝送,転写される過程を生理的・神経回路的に実現可能な形で示すことができた.また,情報伝送,転写に成功した場合でも,単に出力系列が同じな場合と,回路形態までもが同じになる場合の2種あることがわかった.これは記憶の転写が表層的なものである場合と,より正確な理解を伴った記憶である場合の違いではないかと考えられる とくに本年度においては,本挑戦的萌芽研究の成果を基にし,並行的に開始していた基盤研究(A)「脳記憶ループと遠隔転写の生理学的実証」において,マルチチャネル電極を用いた神経細胞外スパイク波形列からM系列を発見し,本萌芽研究の仮説が裏付けられ,その妥当性が裏付けられたことは非常に大きな成果であった
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