我々はtime-shift図法を開発し、頭表脳波・皮質脳波、MEGからの脳波伝播解析を世界に先駆けて行った。そこでは、様々な情報が同時並行的に脳内各部に順次伝達される状態が可視化された。そこで我々は、脳構成論の立場から、記憶の基本はループ回路であり、このような経路の探索・形成がHebb則に従う神経回路で可能であり、記憶銘記、連想、抽象化、記憶の再構成など脳情報処理の基本機能が、単純な経路形成のみで統一的に説明され、生理的・神経回路的に実現可能であることを示す研究を進めている。その一環として、平成21-23年度、本研究において、脳内記憶ループ回路モデルに関するシミュレーションを行い、ループ回路へのバックプロパゲーション学習の適用などを行った結果、time-shift図を説明できるような通信機能の自己組織化が物理的に実現可能であることが分かった。ここで脳内記憶ループ回路について、当初は1ニューロンが1論理素子に相当すると考えていた。しかし平成23年度下半期、シミュレーションを進めていく過程で、単一ニューロンが論理素子として機能するとは考えられず、小規模なニューラルワークを1論理素子とした新しい回路モデルを考案した。この回路モデルに関し、理論的、実験的検証のため、平成24年度も本研究を続投すべく、研究費用の繰り越し申請を行った。その上で、上述の理論的、実験的検証を行うことが出来た。
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