非冷却で動作する高感度赤外線センサを、非線形性が強いねじりバネと組み合わされた振動子を利用して実現することが目的である。波長に対する広く一定な感度を持つ熱型センサの特徴と、小さな振動子のアレイ化し易い特長によって、赤外分光をハンディな小型システムで実現する基盤とする。 デバイスを製作した。応力モニタ構造による引張応力測定なども並列して行った。薄くて細長い梁の中心部分に、ポリシリコンと金の2層膜構造を持つ振動体を用意した。プロセス条件の良否判定に時間を要したが、評価に至った。歩留まりは10%程度で、全デザインのデバイスを振動できた。共振周波数は、デザイン寸法よりも薄膜のバネ部が小さくなり、設計値より30-50%低め(20-70kHz)となった。Q値は23-150が得られた。振動体が小さいデザインは、100を超える高いQ値を示した。 センサ感度など温度特性については、十分な評価に至っていない。高温部となる振動体のみに金膜がある構造を用意できなかったからである。振動体のリリース前にパターン形成はできるが、犠牲層エッチング時にシリコンと金の構造がフッ酸を介して電気化学エッチングを引き起こし、必要な構造が残らなかった。2011年度は、プロセス全体の推敲(自作装置を利用した気相HF犠牲層エッチング関係がポイントとなる)を含めて、感度に関する知見が得られるように研究を進める。 また、マイクロミラーでの薄膜トーションバーの精密な変形計測を行い、バネの非線形性に関して理論式導出も検討したところ、共振周波数の変化が値の大きさも含めて説明できるようになった。これについて学会発表が進んだ。 以上のように、研究の指針がデバイス製作と理論の両方で進んだ。
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