研究概要 |
本研究は,生体制御系にみられる「ゆらぎ」と「遅延」を活用する制御の構造を明確にし,「ゆらぎ」と「遅延」が本質的に避けられない通信ネットワークを介した分散制御系での新しい制御原理を導き,解析と設計の基礎を築くことが目的である. 本年度は生体の運動制御のモデル,特に直立動作やスティックバランシングなどの数式モデルに対して提案された遅れ確率制御を詳細に調べるとともに,自転車や列車の運転などの人の操作にみられるゆらぎの補償法への適用可能性についても考察を行った. その結果,遅れ確率制御に関しては,特に直立動作やスティックバランシングなどの代表的なモデルを対象にしてこれまでに提案されている確率制御と遅れ時間システムの安定性の条件を詳細に調べ,その過程でこれらの条件には一部不十分なところがあることを明らかにした.なお,この条件の修正には更なる考察が必要で,本年度中の学会発表にまでには至っていない.また,通信を介した遠隔操作の補助法として研究代表者がこれまでに扱っていたウォッシュアウト制御法と呼ぶ方法を用いた場合についても考察を行い,操作性の新たな指標として2ポートネットワークシステムの特性に基づくものを導出し,制御ループに通信遅延が介在する場合への解析の準備を整えた. 来年度は,確率制御と遅れ時間システムの安定性の条件の不明確なところを補うため,伊藤公式や線形行列不等式などを援用することを計画している.
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