研究概要 |
本研究は,生体制御系にみられる「ゆらぎ」と「遅延」を活用する制御の構造を明確にし,「ゆらぎ」と「遅延」が本質的に避けられない通信ネットワークを介した分散制御系での新しい制御原理を導き,解析と設計の基礎を築くことが目的である. 平成22年度は生体の運動制御のモデル,特に直立動作やスティックバランシングなどの数式モデルに対する遅れ確率制御の安定性の条件を詳細に調べた.特に解析を容易にするために,2次の対象に限定してその確率安定性の条件の導出を試みた.その結果,適切な大きさの確率的係数変動が時間遅延の影響をモーメント安定性の意味においては低減できるという結果を導くことができ,その成果を学会にて発表した.なお,より現実のモデルに近い高次の時間遅延確率微分方程式に対する解析については,更なる考察が必要で,平成23年度に継続して行う.また,研究代表者がこれまでに扱っていた通信を介した遠隔操作法での確率的変化検出法の検討も行い,制御ループに通信遅延が介在する場合への解析の準備を整えた.加えて,高速道路の渋滞のモデルとして運転手の操作遅れを表現できるオートマトンモデルを用いて,操作遅れを解消することにより渋滞抑制を行う手法も考察した. 来年度は,より現実のモデルに近い高次の時間遅延確率微分方程式を対象として確率安定性の条件を導くことを目標とする,そのため,伊藤公式や線形行列不等式などを援用することを計画している.
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