目標1(入札監視の視点)では、欧米諸国における文献調査を行った結果、入札戦略に関ずる論文は、大きく分けて、モデル分析等を行うAnalytical approachとアンケート調査等によるEmpirical studiesの2つに分類できること、また前者では、自社積算コストが最も重要な説明変数とされる場合が多く、その推定・検証は、企業の内部データの提供を受ける形で行われることが多いことが明らかとなってきている。目標2・3(応札企業の入札戦略に関ずる視点、品質確保の視点)では、上記目標1の結果、及び現状での我が国における業界文化、研究環境等を鑑みれば、欧米研究のような自社積算コストベースの前者に基づく研究プロセスを短期間のうちに進めることは困難と判断し、Empirical studies論文群を参考としたアンケート調査を企画した。なお、この企画は、平成21年度土木学会重点研究課題として調査が実施された。本研究では、この調査結果を活用し、大手建設企業の入札戦略の国際比較分析を行い。我が国の特徴を明らかとした。また、徳島県を対象に入札結果の統計分析を行い、発注ロット及びJV運用の推移モニタリングや総合評価方式導入の経緯と工事成績評定点の推移動向、及び災害対応等社会貢献活動と受注実績との関係分析を行った。さらに、以上の二つの調査・分析結果に基づいた公共調達シミュレーションモデル構築の可能性を探り、マルチエージェントシミユレーションをベースとした基本モデルの構築という方針を固めることができた。次年度より、この方針づくりに際して多くの知見を提供いただいた専門家2名を分担研究者及び連携研究者として迎えた体制へ展開予定である。目標3(契約制度改革の視点)では、出来高部分払い制度の試行案件の抽出調査を行い、影響分析のためのデータベース構築作業をほぼ完了させることができた。
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