研究概要 |
超弾性効果を期待する形状記憶合金と超塑性合金の複合構造からなるダンパーを用い,ダンパー自体に自己復元特性を付与するとともに,高いエネルギ吸収能を持たせることを検討した.本年度では,数値解析モデルを構築し,ダンパー部材諸元の最適化および模型試験体を用いた繰り返し載荷試験による挙動検証を行った. 1.精緻な繰り返し材料構成則の構築 平成21年度での材料試験データに基づき,ダンパーの挙動特性把握のための有限要素解析に必要となる材料構成則のモデル化を行った.ここでは,詳細な挙動予測を行うための精緻な材料モデルと,設計への適用を目的として材料パラメータを絞り込んだ簡易なモデルの2種類について構築した. 2.機能性合金の製作性を考慮したダンパー機構の改良 形状記憶合金において安定した超弾性効果を付与するには細径の断面とする必要がある.そのため,圧縮力作用下では容易に座屈が生じ,自己復元機構を発揮することが難しいことが判明した.そこで,超弾性合金の引張力のみでダンパーの自己復元特性を付与する機構を新たに開発した. 3.ダンパー部材諸元の最適化 ダンパー部材としての最適特性を発揮する部材諸元を決定する最適化問題を定式化した.具体的には,1.で構築した数値解析モデルに基づき,平成21年度に検討を行ったダンパーの許容残留変形量に関する制約条件下においてエネルギ吸収量が最大になるように幾何形状を最適計算により決定した. 4.ダンパー部材試験体の製作と性能評価 3.にて決定された最適なダンパー諸元に基づきダンパー部材の模型試験体を製作し,1軸繰り返し載荷試験によりその特性を評価した.その結果,自己復元特性および高いエネルギ吸収能を発揮しうることを実験的に確認した.また,1.での材料モデルを用いた数値解析結果とも良好に一致し,ダンパー機構および数値解析モデルの妥当性を確認した.
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