研究概要 |
本研究は,浅層の地下水の新たな活用ニーズに対処するため,地中に設置する鉛直土層を介して地下水を地表面から蒸発させ,そのときの気化熱によって路面温度の低下を図るヒートアイランド緩和技術の可能性を探ったものである.平成21年度は不飽和な土層中で地下水が上昇するときの不飽和浸透特性について検討したこれに対して,平成22年度は,土層の地表面からの浸水現象について,特に,内部の間隙空気の挙動とそれによる浸水特性への影響を究明した(当初,土層上面の蒸発速度と地下水上昇機構の解明を中心に行う予定であったが,降雨影響を究明することとした).砂試料を用いた不飽和層に人工降雨を鉛直一次元で浸水させる実験に基づき検討した結果,次のような事項が得られた. (1) 降雨量(浸水速度)の増加させたとき,間隙空気が封入され最大で数kPaの間隙空気圧が発生する傾向にあることが判明した.また,土層の飽和透水係数の値に近い降雨量では地表面に湛水が生じた. (2) 降雨量の増加に伴い,地表面付近の飽和度は90%程度に上昇し透気係数がほぼゼロになる傾向にあった.即ち,空気封入・空気圧発生には地表面付近の排気条件が関係しているとみられた. (3) 間隙空気の封入・空気圧発生によって,土層の下方で保持されていた間隙水の透水現象が生じること,また,上方での飽和度上昇が一時的に制限される傾向があることが得られた. このように,研究期間内では,毛管上昇機構と降雨浸透機構の基本的特性を究明するにとどまったが,継続的に検討を進める予定である.
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