研究概要 |
衝撃水圧計測,振動流中の乱流境界層内のせん断力計測により,力学的刺激に応答し発光する渦鞭毛藻Pyrocystislunulaを海水中に混入し画像計測を行うことで,非接触で流体中の衝撃圧及びせん断力分布を計測可能であることを明らかにし,当初の研究目的を達成した. 衝撃圧に対しては,P.lunulaを計測メディアとし,海水を充填した立方体容器に一定の個体密度で混入し可動式容器蓋で密閉する.落錘を容器蓋に衝突させ,容器内の海水中に一様な衝撃力を与え生物発光分布を高速高感度カメラにより動画像計測すると同時に,同期したロードセルにより実圧力を計測した.画像上の発光輝度は,予め生物発光による起電力をフォトダイオードによって計測し,その較正値をもとに起電力として正規化される.発光輝度のバイオリズム依存性を表す条件付き確率密度関数を提案すると共に,ロードセルによる実圧力と輝度の線形相関関係から,発光強度から衝撃圧と力積を決定する経験的近似較正式を提案した. せん断力については,海水を充填した小型U字型振動流装置水路内に一定の個体密度のP.lunulaを混入する.水路下面に砂蓮形状モデル底面を固定し,電動アクチュエータに接続したエアシリンダーによる空圧変動によりU字管内に正弦振動流を発生させた.底面上砂蓮上で振動流に輸送されながら発光するP.lunulaの分布を高感度カメラで撮影した.Super resolution PIVによって取得した流速分布から決定した歪率と発光輝度には線形相関関係があることが明らかになり,発光強度をパラメータとしたせん断力を見積もる近似較正式を提案した. 生物発光は流体力の変化速度に依存するため,動圧力とせん断力の変化速度の大きく異なる流れ場に本計測法を適用することにより,どちらか一方の応力のみを抽出することができる.開発した生物発光をベースにした画像計測法により,水中の流体応力分布を非接触で決定することが可能となるため,多様な分野において応用が可能なものと考える.
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