ゲリラ豪雨を予測するために、レーダーで見えない赤ちゃん雲、ひいては卵の状態がどのようであったかを解析し、さらに豪雨発生の状態から元の卵の状態まで時間的に逆推定することで、何を新たに観測すれば予測が可能となるかを明らかにし、降雨予測手法の発展へと結びつけることを研究目的としている。そのためにまず平成21年度には、過去に豪雨災害が発生した3つの降雨事例(2008年神戸都賀川の事例、2008年京都宇治の事例、2006年豊中豪雨)についてそれぞれ卵がどのような状態にあったか、レーダー情報と大気モデル解析値を用いた解析を行った。全ての事例において、豪雨をもたらす積乱雲は大気上空4-7kmにおいてその卵の発生・発達を確認することができた。卵発生時には地上での降水は無く、レーダーによる3次元観測が極めて重要であることを示した。また、感度の異なる2種類のレーダーを比較することで、感度の良い小型レーダーを用いたきめ細かな観測情報が非常に有効であることを示し、2010年度より試験運用を開始する国土交通省のXバンドMPレーダ群の価値が高いことが確認できた。加えて、大気モデル解析値から、水蒸気フラックスと水平風収束と相当温位に豪雨の発生直前にそれぞれ高値を示すことがわかった。平成22年度には、国土交通省のXバンドMPレーダ群の観測情報をデータ同化することでどの程度予測が可能となるか、また、さらに時間遡上法を開発することで何を新たに観測すれば予測が可能となるかを明らかにしていく。
|