警告対策としてグルービングの有効性を高めるため、エゾシカが反応した音の性質を調査し、さらにグルービング音が道路を横断しようとしたエゾシカへの影響を調べた。これらの結果ついて、第62回土木学会北海道支部学術研究会にて発表した。 グルービングは、グルービングマシンによって、舗装表面に縦方向または横方向の溝をつけることにより、排水を促進させ、湿潤状態における舗装路面の摩擦係数を増大させようとするものである。車両走行時には、タイヤとの関連によって音が発生する。昨年度、国道238号線の猿払村付近に、エゾシカの警戒声に近い音を出すグルービングを施工した。現地にて、詳細な、グルービング音の計測を実施した。これらの結果から、グルービング走行時の振動音を空間的に推定するモデルを確立した。 また、2009秋から冬にかけて施工区間を横断したエゾシカをビデオ観測した。グルービングで発生する2kHz音の継続時間(無音、有音)や音圧がエゾシカに与える影響を調査した。ビデオから、通過車両によるグルービング音が、道路を横断しようとするエゾシカの行動に与える影響を記録できた。横断しようとしたエゾシカが、.横断を中断し、元の場所に戻ったり、警戒したいりする行動がみられた。 以上の研究から、警戒声に近い音を道路から発生させることは、エゾシカの行動に影響を与えエゾシカと通行車両との事故を減らす効果があることを明らかにした。ただし、道路のグルービングによる音には限界が多々あり、効果的な対策となるかどうか不十分であることも音響モデルから明らかになった。今後、さらにエゾシカの警戒声を有効にエゾシカ事故対策に生かす方策を模索する必要がある。
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