本研究では、安全で快適な走行景観を意図的につくり出せるパターンデザインを行えるよう、動的視点での反復パターンと印象の関係を明らかにすることを目的としている。 動的視点での反復パターンと印象の関係の知見は、施工事例の検討経緯の報告が数例有るだけで、学術的な検証はほとんどおこなわれていない。そこで、初年度である21年度は、走行空間においてどのような反復パターンの時にどのような印象を受けるのか、その知見を増やすこととした。いわば、次年度に向けた予備実験の位置づけである。ケーススタディとして、交通安全対策が求められるトンネル空間を設定し、パターンサンプルを作成し、その印象を確認した。 トンネルのように視界が限定された閉鎖的な道路空間では、運転手は均一で単調な空間に飽きてしまい、集中力の低下や眠気により事故へとつながる危険性がある。長大トンネルの単調さによる意識低下を防ぐ必要がある。対策事例として、トンネル壁面にパターンデザインを施した小鳥トンネルと稲荷山トンネルがある。この2つの事例を現地調査し、壁面におけるパターンデザインの検討を行った。 この空間に求められる印象は、走行性、快適性、単調さの改善であった。これらをより良くするため、「起承転結」のストーリーに合わせたコンセプトを設定し、パターンの形、配置、色の変化によりパターンに向かう意識の強弱をコントロールするデザインを行った。運転手がトンネル空間を単調に感じず、快適に走行できるかを確認するため、男子大学生12名を被験者として、簡易的な走行シミュレーションによる実験を行った。その結果、走行性で走りにくいが17%あったが、快適性、単調さの改善では、全員が良い評価であり、物語のあるパターンデザインが有効であることが確認できた。
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