近年、欧州は、特にオランダ、ドイツや北欧諸国をはじめ、バイオリージョンづくりまたはバイオリージョンマップづくりが積極的に進められている。バイオリージョンづくり(bioregion、エコロジカルな地域づくり)とは、「生命地域」と訳されており、気候、地形、流域、土壌、野生生物など、独特の自然の特徴によって決まってくる地域の生命圏のことであり、それらの自然環境に順応し、調和した形で営まれている生活様式や都市の機能までも含めた概念である。本研究では、研究調査対象地域としてオランダ、ドイツ、デンマークの3カ国における市民参加によるバイオリージョンマップづくりの現況調査を行う。さらに、豊かな里山里地が残っている北九州市若松区を比較対象地域として、市民参加によるバイオリージョンマップづくりを実施し、都市及び近隣農村地域での特徴を明確し、地域全体の生物多様性マップを作成することを目的である。平成21年度は、オランダのランドスタッドメトロポリス地域(アムステルダム・デンハーグ・ロッテルダム・ユトレヒト)及びデンマークのコペンハーゲン市にてバイオリージョンづくりの現地調査及び資料収集を行った。両調査地域を中心としてバイオリージョンづくりの政策及び広域バイオリージョン計画を作成している。コペンハーゲン市及びランドスタッドメトロポリス地域の「Groenblauwe slinger」という広域生命地域を中心に着々と実行していることが確認できた。バイオリージョンマップづくり、地域イノベーション及びその活用方法に関しては地域の産業・行政・大学・市民に広く情報を公開し、意見を求めることが問題解決の基本であり、それぞれの立場、理解度、表現力は多様であり単純な方法では対応できない。基本的に1)必要な情報に自由にアクセスできること、2)意見交換する場、学ぶ場があること、3)専門家の意見を聞く機会があること、4)政策や未来モデル構築に参加あるいは提言できることが必要である。
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