本研究は我が国の外国人居住者の増加を背景に、多文化共生社会の実現をめざし、都市景観の変化に着目し、あらたな社会基盤形成の指針を得ることを目的とするものである。研究対象地は東京都内で外国人居住者の比率が高い新宿区とした。特に、同区内でも外国人居住者住居と外国人居住者向け商業施設の立地が集中し、極めて特徴的な景観が形成されている大久保地域について詳細な調査・分析を行った。 大久保地域に居住する韓国人を対象にヒアリング調査を行い、居住地選択の理由による「職住近接型」「情報不足型」「生活便利型」「心理的安定型」の4類型毎の行動パターンの特徴について分析した。 さらに、東京23区内の外国人居住者の動向を国勢調査の統計資料に基づくGIS情報を用いてマクロ的に把握した。その結果、外国人の居住傾向と疎密を抽出できた。国籍別に分析すると、中国人と韓国人との間に差異があることが明らかになり、特に、韓国人の場合は大久保地域と上野地域への集中が特定された。また、過去30年間にわたる23区内の動向の中で、新宿区における外国人居住者数の急増が極めて顕著である事を確認した。 韓国人ニューカマーにとって、大久保地域が日本社会に入るためのゲートウェイの性格を持っていること。入国後、一定の期間が経過すると周辺地域に移転する傾向があることなどの一般的な挙動傾向が確認された。 以上の外国人居住の動向を踏まえ、わが国が今後多文化共生社会へ転換していくための、内発的な条件と外発的な条件を考察し、研究の総括とした。.
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