研究概要 |
愛媛県南予地域の三間町ならびに中予地域の久万高原町の古民家に使用されている部材の樹種とその材積が周辺地域の植生とどのような関係があるかを検討した。小屋裏から床下まですべての部材の断面寸法と長さを測定し材積を求めた。また,それらの部材から小試験体を切り出した。採取した小試験体から1センチ四方の立方体を切り取り,蒸留水の入ったビーカー入れ,電子レンジで空気が抜けるまで煮沸した。次にミクロトームで木口,板目,柾目の三断面から20μmの厚さの切片を作製した。切片をスライドガラスに載せ,ガムクロラールで封入をした後,光学顕微鏡観察により樹種を同定した。 その結果,針葉樹ではヒノキ,スギ,ニヨウマツ,ツガ,広葉樹では,クリ,ヤマザクラ,スダジイ,アカガシ亜属,ビワ,トチノキ,コナラ節,ケヤキが確認された。スギ,ヒノキはほとんどの構造材に使用されていた。その他の樹種は,アカマツは強度に優れるが,白蟻抵抗性に劣る為に小屋裏周辺の部材へ,クリは耐久性に優れる為直接地面に接する土台等の床下部材へ,ヤマザクラは耐摩耗性に優れる為磨耗してはいけない敷居や床板へ,ビワとトチノキは化粧性に優れる為床の間の装飾材へ,コナラとケヤキは強度に優れる為梁へ,それぞれ適材適所に使用されていた。一方,ツガとスダジイは他の樹種が使われている箇所に限られた数だけ使われており,修復などのために手近な材を使用したと考えられる。いずれも確認された樹種のほとんどは各調査家屋周辺の植生と一致しており,周辺の材を使用していることが分かった。
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