H21年度は、主としてラーベス相混晶系の(Tb-Dy)Fe_2、(Tb-Ho)Fe_2、(Tb-Dy-Ho)Fe_2に関する実験研究を行った。また、Ni_2MnGa合金の実験も行った。磁化、磁歪、透磁率の測定結果(多結晶試料)から、以下のような超磁歪とソフト磁性の発現要件を見出した。 1.モルフォトロピック相境界(MPB)と磁化容易軸相境界(MEAB)は、K_1>0とK_1<0(K_1は立方晶の結晶磁気異方性定数)の強磁性混晶系において、例えば、K_1~0となる濃度に存在する。また、MPBはMEABの三重点である。 2.ラーベス相混晶系におけるMPBまたはMEABでは、磁歪定数(λ)が|λ_<111>|>>|λ_<100>|であるときに、C_<44>のソフト化モードに起因する超磁歪が発現する。 3.MPBまたはMEABでは自発磁化に対して垂直方向の磁化率が極大となる。そして、λ_<111>~-λ_<100>であるときにソフト磁性となる。 4.(Tb-Ho)Fe_2の混晶系に存在するMEABの三重点で、ソフト磁性になることが判明した。これは上記条件3の実証である。しかし、条件2を満足しておらず、超磁歪ではなかった。 5.Ni_2MnGaの中間相変態点(T_2)近傍で、C_<11>-C_<12>のソフト化モードに起因する超磁歪が発現することが判明した。 以上の結果は、MPBと磁性材料の関係を明らかにしたもので、超磁歪材料やソフト磁性材料の将来の新しい開発指針を示唆するものである。
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