研究概要 |
生体に学ぶ"ことで、これまで"悪者"であった"ばらつき、ゆらぎ"を積極的に活用した新しいデバイス(情報処理素子、メモリ素子)の為の新材料開発を目指すものである。生体が生来備え、巧妙に活用している"情報のゆらぎ:確率共鳴現象による情報処理原理"を利用するという、従来とは、全く逆の発想(アプローチ)により、生体機能模倣デバイス:確率共鳴デバイスを目指した新材料を創製する事を目的として研究を実施した。 先行研究で開発した、室温でスピングラス(クラスターグラス)を示す材料:スピネル型フェライト材料(Appl.Phys.Lett.78(2001)512&76(2000)1179)を活用して、その"スピンゆらぎ"を利用することで、生体ゆらぎの模倣を試みる。 磁性イオンと非磁性イオンの拮抗が生み出すスピンフラストレーションがスピングラス創出のポイントとなる。 具体的な材料として (Mg2+,Fe3+){Mg2+,Fe2+,Fe3+,Ti}2O4 (Ru,Fe3+){Ru,Fe2+,Fe3+,Al3+}2O4 Al0.5Ru0.8Fe1.7O4などを検討する。 これらを、レーザーMBEにより、SrTiO3,Al2O3基板上ヘエピタキシャル成長させた薄膜を形成し、MCD,SQUID等による磁気物性評価、およびマイクロプローバによる輸送特性評価を行った。 さらに、電荷整列型強誘電体の薄膜化を試みた。特に、多層超構造を有し、多彩な物性を発現すると期待される六方晶鉄酸化物RFe2O4(R:希土類元素またはIn)に注目し、PLD法を用いることで従来成功していないかった薄膜化に成功した。これは菱面体晶系(空間群R3m)に属する層状酸化物でありFeイオン混合原子価状態(RFe2+Fe3+O4)をとるフェリ磁性体(または反強磁性体)である。Feイオンは三角格子二層を単位とする擬2次元層構造を有し、また電荷の配置に関してフラストレーションを実現するため、Fe2+とFe3+の超格子構造が出現する。また、ある転移温度以下でFeイオンの電荷整列により自発分極が発生するため、マルチフェロイック材料としての応用が期待される。
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