研究概要 |
人工腱や人工靭帯などの機能再建材料には,柔軟性や力学的特性に加え,硬組織適合性や軟組織適合性が求められる.申請者らは(1)無毒性および非アレルギー元素から構成され,人工腱に求められる(2)低弾性率かつ高強度を有する生体用β型チタン合金Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr(以下TNTZ)を開発してきた.本研究では,シランカップリング剤を用いてTNTZとSPUとを複合化することにより,TNTZの軟組織適合性の生体機能化を試みる.界面の化学構造,接合強度,耐久性,および生物学的生体適合性を評価することで,TNTZ-SPU複合化条件の最適化を行う.本年度は,官能基の異なるシランカップリング剤(3-メルカプトトリメトキシラン,3-アミノプロピルトリエトキシシラン,3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレート)をTNTZ上に被覆し,各シランカップリング層の膜厚の制御を試みた.その結果,各シランカップリング剤の濃度および浸漬時間を制御することにより,目的とする膜厚を有するシランカップリング層(1-10nm)をTNTZ上に作成することができた.また,異なる膜厚のシランカップリング層を有するTNTZとSPUとを複合化し,界面のせん断接合応力を測定したところ,いずれのシランカップリング層の場合も,シランカップリング層の膜厚の増加に伴って,界面のせん断接合応力が増加することが明らかになった.
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