研究概要 |
本研究では,スギ・ヒノキ・カラマツ・アカマツを試料木材として取り上げ,圧縮木材の透明性発現機構を実験的に解明することを目的としている.平成21年度は,(1)透明性発現条件の解明と(2)透明性発現開始組織の特定と伝播過程の解明を行った. まず.透明性発現条件の解明については,樹脂が柔細胞から分泌されるスギとヒノキ,樹脂が樹脂道から分泌されるカラマツについて,透明性発現(透過率)に対する圧縮量(比重),含水率,木取り条件(心材,辺材),圧縮形状の簡易永久固定処理条件(熱処理温度と熱処理時間)の影響を実験的に検討した.その結果,比較的低温の熱処理条件下においても透明性が発現すること,熱処理温度が高くなるに従い透明性が発現する熱処理時間が短くなること,熱処理温度・熱処理時間により透過率が変化すること,含水率が高いと透明性が発現しやすいものの特有な割れ現象が発生し易くなること等を明らかにした.また,板目面や柾目面よりも木口面の透過率が高いことなど,光伝播について異方性が存在することについても明らかにした. 次に,透明性発現開始組織の特定と伝播過程の解明については,圧縮されたスギとヒノキの各組織(仮道管,柔細胞,放射組織など)に着目して透明性発現組織と透明性伝播過程について実験的に検討した.その結果,透明性発現領域は,木材内の特定組織に対応した一定寸法をもつスポット状領域として発現し,熱処理時間が長くなるに従い,この領域が周囲に千鳥パターン的に拡大するなど,透明性発現組織と透明性伝播過程を明らかにした.
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