研究課題
種類の異なる純金属の接合体に対して、対数相当ひずみ100以上に及ぶ巨大ひずみ加工(HPTプロセス)を室温で施し、バルクメカニカルアロイングの進行に伴う化学組成と微視構造の変化を観察した。平衡熱力学において導かれる混合熱(混合のエンタルピー変化)が大きな負の値から大きな正の値にまで種々異なる異種金属の組合せを選択することにより、原子レベルの混合(合金化)と構造変化に及ぼす混合熱の影響を明らかにすることを目的として実験を行った。比較的大きな負の混合熱を有するCu-Zr系の場合、HPTにより巨大な塑性加工を施すことにより、原子ベルの混合の後、非晶質相(金属ガラス)が形成された。正の混合熱を有するT-Zr系(ΔHmix=0kJ/mo1)やNb-Zr系(ΔHmix=+4kJ/mo1)の場合、HPT加工によりω-Tiやβ-Zrといった高圧相・高温相が出現し、回転数の増加に伴って原子レベルの混合が進行し、それぞれhcp構造およびbcc構造を有する固溶体が形成された。一方、非常に大きな正の混合熱を有するAg-Ni系(ΔHmix=+15kJ/mo1)の場合、100回転のHPT加工後も、原子レベルでの混合は生じていなかった。これらの結果より、固体状態でのメカニカルアロイング(原子レベルの混合)および金属ガラスの形成にも、異種金属間の混合熱が大きな影響を与え、正の混合熱を有する金属種の組み合わせの間では、メカニカルアロイングが生じにくいことが明らかとなった。
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