研究概要 |
種々の薄膜材料に望みの方向と大きさの『変形応力(歪)』を動的に加えることができる形状記憶合金を利用した『アクティブ歪制御基板』の創製を行い,薄膜デバイスと一体化させデバイスの特性に及ぼす『歪』の効果を検証し,高機能薄膜デバイスの開発に関する基礎的知見を得ることを目的とした.21年度は以下の項目について検討した.(1)「Si基板上への形状記憶合金の成膜条件と微細構造および形状記憶特性の評価」:形状記憶合金としてTi-NiおよびTi-Ni-Cu合金を選択しマグネトロンスパッタリング法によりSi基板上への成膜条件の確立を行った.続いて適正条件で成膜された試料を450~650℃の条件で結晶化させ,Si基板との界面反応に着目して透過電子顕微鏡による断面観察を行った.Si基板上に合金膜を直接成膜した場合,Tiシリサイドの生成と成長が顕著であったがSiO_2上では界面反応が抑制され健全な結晶化合金膜が得られた. (2) 「形状記憶合金薄板上へのSi結晶膜の形成と密着性の評価」:アーク溶解,熱間および冷間圧延により準備した形状記憶合金薄板にSiO_2および非晶質-Si薄膜を堆積させる成膜条件の検討を行ったが,適正条件の確立には至らなかった. (3) 「形状合金薄膜およびSi基板の微細加工~アクティブ歪制御基板の設計・試作」<西田,板倉> 項目(2)の進捗が遅れているため,当初予定していたSi/SiO_2/形状記憶合金/SiO_2/Si多層膜を基本とするアクティブ歪制御基板構造の試作は行えなかったが,試作工程として1)スパッタリングによる形状記憶合金の成膜,結晶化および記憶熱処理,2)合金薄膜のパターニング(リフトオフ法),3)Si基板部加工(異方性エッチング)4)Au電極形成,5)Si薄膜形成を想定し,各々について解決すべき実験上の問題点を検討した. 上記以外に通常の過程で作製されたSi-Ge薄膜,β-FeSi_2薄膜の微細構造解析を行った.
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