18%Cr-8%Ni(SUS304)鋼のシースに、同組成の線材(直径1mm)40本と初期平均粉末粒径4μmのTiB_2 13.5Vol%を封入し、第1回の伸線を直径1mmまで行った。引き続き、同様の方法で、さらに2回の集束伸線加工を実施した。最終3回目の集束伸線を施した線材でのTiB_2量は、20.6vol%であった。この試料について、ナノインデンター法によりヤング率を測定した結果は229MPaであった。この値は、粒子分散型の複合則から計算されるヤング率と等しく、TiB_2によるヤング率向上効果が、前年度のフェライト系材料と同様に認められた。 一方、引張試験による0.2%耐力、最高強度と伸びは、第1回伸線材で280MPa、570MPa、27.2%、第2回伸線材で282MPa、376MPa、5.7%、第3回伸線材で367MPa、389MPa、0.6%であった。伸線加工回数が多くなるに従い、0.2%耐力は向上するものの、最高強度と伸びは低下した。応力-ひずみ曲線から、強加工の影響により最大荷重に達する前に破断することが判明した。この結果から、最終伸線後、さらに焼鈍処理することで、高強度、高剛性線材を創生できることが示唆される。3年目の来年度は、焼鈍条件の適正化について研究を行う。合わせて、TiB_2粒子の分散状態を定量化し、強度、伸びとの関係を明らかにする。なお、破面を走査型顕微鏡観察した結果、ディンプルから形成される延性破壊であり、耐脆性破壊特性は、線材として問題ないことを確認した。
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