研究概要 |
前年度ではCa^<2+>濃度を変化させたエタノール溶液中でTiに電気化学処理を行い,CaCO_3を含むカソード皮膜を作製し,擬似生体溶液(ハンクス溶液)に浸漬させたときのハイドロキシアパタイト(HAp)の形成能を調査した.今年度は同様の手法を使用して,エタノール中の水分(H_2O)濃度がカソード皮膜の形成およびその後のHApの形成能に及ぼす影響を検討した. 試料にはJIS第2種Tiを,処理溶液にはCaCl_2濃度を0.07Mに固定しながらH_2O濃度を変化させたエタノール溶液(25℃)を用いた,各溶液中で定電位の電気化学処理(3V_<Ag/AgCl>)を行い,対極TiにCaCO_3を含む皮膜を生成させた.その後,処理材を温度37℃, pH7.4のハンクス溶液に浸漬し,HApの生成状況を調査した.電気化学処理およびその後のハンクス溶液への浸漬処理によってTi上に形成された皮膜の調査には走査型電子顕微鏡,エネルギー分散型元素分析装置,X線回折解析装置などを使用した. その結果を以下に示す.H_2O濃度を変化させたCa^<2+>/エタノール溶液中で電気化学処理を行うと,H_2O濃度が0.07M以下の場合にはCaCO_3の一種であるカルサイトとバテライトがおもに生成し,それ以上のH_2O濃度の場合にはCa(OH)_2がおもに生成した.主成分かCaCO_3であるカソード皮膜でも,Ca(OH)_2であるカソード皮膜でも,その後のハンクス溶液への浸漬後には,その表面にHApが生成した.したがって,本手法によってTi表面に形成されたカソード皮膜の組成はH_2O濃度の影響を受けるか,HApの形成に対するH_2O濃度の影響はそれほど顕著ではないことが明らかになった.
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