研究概要 |
過去2年の研究では,Ca^<2+>濃度およびH_2O濃度を変化させたエタノール溶液中でTiに電気化学処理を行い,CaCO_3を含むカソード皮膜を作製し,擬似生体溶液(ハンクス溶液)に浸漬させたときのハイドロキシアパタイト(HAp)の形成能を調査した,今年度は同様の手法を使用して,Ca^<2+>含有エタノールの温度がカソード皮膜の形成に及ぼす影響を検討した. 試料にはJIS第2種Tiを,処理溶液にはCaCl_2を0.07Mに,H_2Oを0.03Mに固定しながら温度を変化させたエタノール溶液を用いた,各溶液中で定電位の電気化学処理(3 V_<Ag/AgCl>)を行い,対極TiにCaCO_3を含む皮膜を生成させた.この皮膜の調査には走査型電子顕微鏡,エネルギー分散型元素分析装置,X線回折解析装置などを使用した. その結果を以下に示す.処理溶液を各温度に制御して電気化学処理を行った後の対極Ti試料表面のSEM画像から,いずれの温度で処理した試料の表面にも皮膜が形成されており,温度によって皮膜の形態が異なることが確認できた.また,EDXによる元素分析の結果から,いずれの皮膜もCaを成分に持つことがわかった.処理溶液を各温度に制御して電気化学処理を行った後の対極Ti試料表面のXRD結果から,323,343Kで電気化学処理した試料からはCaCO_3の一種であるCalciteおよびVateriteの結晶を示すピークが複数確認された.273,298Kで処理した試料は,SEMによって皮膜が確認できたにもかかわらず,母材であるTi以外の明確なピークはほとんど検出できなかった.したがって,低温で電気化学処理を行って生成させたカソード皮膜は,XRDでは検出できない非晶質Ca化合物が含まれていると考えられる.
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