酸化鉄の還元と金属鉄の水蒸気による酸化から成るサイクル反応を利用する水素生成においては、焼結防止が課題であったが、還元ガス中の微量硫黄成分ガスがこの焼結防止に効果があることが最近林昭二によって初めて見出された。本研究では、従来の焼結防止法である異種酸化物添加法とは異なる被覆法も併用して微量硫黄成分ガスによる焼結防止条件を確立することを目的とした。次に、酸化鉄粉体を造粒したペレットの充填層からの水素生成効率を評価し、マイクロ燃料電池用の廉価な水素供給体の開発を目指した。 その結果、Al_2O_3、CaO、MgOを単独で少量被覆した酸化鉄試料において還元ガス中に微量硫黄成分ガス無添加条件においても相当焼結防止に効果があったが、硫黄成分ガス添加の条件が複数回繰り返しサイクル反応試験においても焼結防止に最も効果があることが知られた。 次に、350℃にて酸化鉄ペレット充填層からの水素生成効率をガスクロ分析から評価した結果、理論値(還元鉄量の4.8mass%水素生成)の91%を得た。通常の工業用還元ガス中には必ず微量硫黄成分ガスが含有しているため、今後更に、本研究の全体システムに改良を重ねて、酸化鉄の還元酸化反応を利用するマイクロ燃料電池用の廉価な水素供給体の開発を目指す。
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