本課題は新しい固定化遷移金属触媒(固定化シングルサイト錯体触媒)の設計・創製と高選択的有機合成プロセスの構築で、具体的には「分子量・サイズが厳密に揃った球状ポリマー表面へ固定化した遷移金属錯体触媒の精密合成と高効率リサイクル触媒プロセスへの適用」 に関する。本課題を通じて、モリブデン-アルキリデン錯体触媒(通称Schrock型触媒)を用いるノルボルネンのリビング開環メタセシス重合と定量的なポリマー末端官能基化手法を駆使して、球状ポリマー末端(表面)に官能基を有する星型(球状)ポリマーの精密合成に既に成功しており、昨年度より均一系触媒の特徴(高活性・高選択性)を生かした高効率リサイクル型の官能基選択的な触媒的合成プロセスの確立を目的に取り組んでいる。 23年度は、昨年度合成・同定したピリジン配位子存在下でのルテニウム触媒によるケトン化合物の水素移行還元反応に焦点を絞って、広範な基質においても高い官能基選択性が発現すること、高い回収効率で触媒のリサイクル使用が可能となることを明らかにした(学術論文投稿中)。また、球状ポリマー表面に官能基を集積化することで、従来には見られない協奏機能効果が得られると考え、基礎的な知見を得る目的でオリゴチオフェンを固定化したところ、開始剤断片のフェニル基との相互作用により単独では見られない青色発光挙動を示した。この結果を基に、性質の異なる錯体を球状ポリマー表面に固定化する課題に焦点を絞って、協奏機能効果による高性能触媒の創製を目的に取り組んでいる。
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