研究概要 |
今年度は、ハエの飼育方法を確立し、ハエ腸内細菌叢の解析に的を絞り研究を実施した。イエバエ科ノイエバエ(Musca hervei)とキンバエ科ミヤマキンバエ(Lucilia papuensis)をそれぞれ捕獲し、研究室において卵→ウジ→蛹→成虫への変態を人為的に行う飼育方法を検討した。なお、イエバエは卵胎生であるため成虫はウジを直接生み付け、その後蛹→成虫へと変態する。与えるエサ、温度の管理、ウジ→蛹への変態の際に腐葉土を与えるなどの工夫をすることで、人為的に研究室内でハエを定常的に飼育できるようになった。一個体から発生したウジ、蛹、成虫それぞれ8個体を任意に選択し、腸内細菌叢を培養法および遺伝子解析法により分析した。ウジ一個体当たりLB(Luria-Bertani)寒天培地にコロニー生成能を持った細菌数は約2×106CFU/個体であった。また同サンプルを6種の抗生物質(Ampicillin, Cefpodoxime, Tetracycline, Kanamycin, Nalidixic acid, Ciprofloxacin)を含むLB寒天培地に接種したところ、高頻度で各抗生物質耐性菌を得ることが出来た。多剤耐性菌がイエバエ腸内細菌槽に常住していることが示された。各抗生物質に耐性能を示した菌体の16SrRNAをコードするDNAをPCRで増幅し,その配列から菌体を同定したところその多くがProteus mirabilisに分類された。
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