研究概要 |
本研究では,マッハ数2~4の超音速流れの中に置かれたトランケーティドコーン(円錐台、以下T-cone)の先端にレーザーパルスによるエネルギーを繰返し付与し,同じ頂角の円錐よりも低い抗力,なおかつ低減できる推進パワーが付与パワー量を上回る作動を実証し,今後の民間超音速飛行の実現に向けて一つの好材料を提供することを目指す。本研究の実験は,JAXA宇宙科学研究本部(以下ISAS/JAXA)の超音速風洞を使用した。まず、名古屋大学が所有する高繰返Nd : YLFレーザー(最高繰返し周波数10kHz)からのパルメを、厚さ80mmのBK7窓を通して試験部に導入するため,凹凸レンズを組み合わせたビームイクスパンダーと,モデル内での45%反射ミラー,平凸レンズ(いずれもNd : YAGレーザー基本波1064nm用に市販されているもの)を組み合わせたレーザーパワー導入系を開発した。予備実験として,真空チャンバー内で静止状態にある試験モデルを用いて風洞環境を模擬した実験を行い,作動と窓への損傷がないことを確かめた。並行して数値シミュレーションを行い、流れ場の詳細と圧力場変動を定量的に予測した。実験は、2009年9月に行った。まず、マッハ数2~4の作動範囲で、ベースラインとなるデータとして,エネルギーを付与しないときのT-coneに働く抗力,衝撃波形状と衝撃波離脱距離に関するデータを取得した。つぎに、T-cone形状を固定し、流れのマッハ数と静圧を制御変数として,レーザーパワー付与したときの抗力測定実験を行った。その結果、当該風洞に設置されている天秤の感度がレーザーパルス付与による抗力低減量を測定するのに十分でないことがわかり、抗力低減量自体の実験データを得ることができなかった。本年度末に最高繰返し周波数100kHzの繰返しパスルレーザーが導入されたので、来年度はそれを用いた実験を行う予定でいる。
|