研究概要 |
一般に,人工衛星の帯電は,地球周辺のプラズマ中のイオンや電子の衝突により起きる.日照時には,光が衛星表面に当たることで表面の電子が光電子として真空中に放出されやすいために,衛星電位は一般に正の値になり,逆に日陰の場合は負の値になる.本研究では、地球近傍領域や惑星間空間における複数の小型衛星による編隊飛行(フォーメーションフライト)への応用を目指して,衛星帯電現象を利用した電磁気力によるプロペラントレスな位置・軌道制御に関する研究を行う。衛星帯電量を積極的に制御することにより,地球磁場との相互作用によるローレンツ力による位置制御を行う手法を構築する.ローレンツ力による衛星編隊飛行では、主衛星は帯電させる必要はなく、副衛星のみを帯電させることで、地球磁場との間に働くローレンツ力を想定することができる。このようなローレンツ力を用いた衛星編隊飛行に関しては、地球磁場をダイポール磁場モデルで近似し、位置と速度の関数であるローレンツ力を地球周回円軌道の軌道要素で表現する。その上で、地球周回軌道上の衛星と共に動く回転座標系における運動方程式を解析的に表現し、その軌道運動を数値積分によって検証した。2つの地点間や2つの軌道間の軌道移行を実現する帯電量を時間とともにステップ状に変化させる制御手法を提案し、解析的に、そして、数値シミュレーションにより確認を行った。また、新たな衛星帯電技術の利用として、人工衛星の姿勢制御にローレンツ力を用いる手法の研究を行った。人工衛星の姿勢制御方法として、重力傾斜トルクを利用した手法は今までに用いられてきたが、これのみでは制御できる範囲が制限されている。しかし新たにローレンツ力によるトルクを利用することで、より汎用性に富んだ制御が可能となることが期待される。本研究では重力傾斜トルクにローレンツ力によるトルクが加わった振り子型衛星というモデルを提案し、初期姿勢と初期角速度によって、振動運動および回転運動を行うことを明らかにした。
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