研究概要 |
本研究は,方位制御装置をもつ船舶の外乱中操縦性能データが与えられるとき,相当する平水中の操縦性能を推定することを目指して,閉ループ同定に基づく推定手法を開発することを目的とする。そのために,昨年度は,対象とする模型船の製作と画像処理による模型船の6自由度運動計測システムの開発を行った。本年度は、第1に、T.I.Fossenらが開発したシミュレータMSSを用いて、単位フィードバック下での船舶(1次野本モデル)の閉ループ同定手法(本研究のオリジナル)が、Z試験による開ループ同定と比べて、どのような優位性をもつかを詳細に検討した。その結果、開ループ同定はZ試験そのものの再現には優れているが、閉ループ同定結果に基づいて設計したPD制御器の方が非線形シミュレータ上でロバストであるという意味において優れていることを示すことができた。また、一定潮流の外乱があるとき野本モデルを精度よく求めるためには、Z試験の舵角やステップ応答試験の目標値の大きさと潮流の強さには、トレードオフの関係があることも明らかになった。第2に、昨年度製作した模型船(アジマススラスタ2基とバウスラスタ1基を装備した作業船の1/33スケール模型)と画像処理による模型船の6自由度運動計測システムを用いて、運動制御系を設計した。まず、サージ方向、スウェイ方向、ヨー方向の各軸独立にPD制御系を設計し、三角形軌道や楕円軌道を追従する実験を行った。次に一定入射角一定潮流を模擬するための相対運動をさせ、そのうえでのステップ応答試験を行った。模型船は舵をもたないので、上記シミュレーションの結果を直接検証することはできないが、最終年度における閉ループ同定手法の確立に向けて準備が整ったといえる。
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