研究概要 |
従来の地中レーダ探査では,レーダの送受信の関係において偏波を考慮しておらず,地層の境界面の深度分布は把握できるが,地下の代表的な物性である誘電率に関する情報は得られない。地層の境界面の形状とともに誘電率分布を探査できれば,地表下浅部の堆積構造,活断層の形態,地層の種類(砂礫質,粘土質など)という構造と物性が同時に明らかになり,地下構造の可視化精度を大きく向上させられる。そこで,本研究では地中レーダ探査に偏波を応用するための基本システムを試作し,システムの特性把握と有用性検証のための基礎実験を行った。また,フレネルの反射理論に基づいて,多層構造における反射率と誘電率の関係式を導き,偏波特性を用いれば各地層の誘電率が算出できることを明らかにした。本研究で得られた主な成果を纏めると以下の3点である。 1. 深度方向に誘電率が増加する地層モデル,逆に減少する地層モデルなど,種々の誘電率のパターンに対してTEモードとTMモードでの反射率を計算でき,両モードでの反射率の相違を明らかにできた。また,この相違を利用して各層の誘電率を求める式が導出できた。 2. 送受信アンテナの配置関係によりTE波とTM波が発生し,同二境界面からの反射波の振幅が異なることが確認できた。また,本作成装置におけるレーダの遅延時間は7.0×10^<-9>sであり,これをデータ解析で考慮する必要があることがわかった。 3. 地層構造が可視化できる建設現場に本装置を適用し,地層の境界面の深度を推定したところ実際の深度に近い結果が得られた。また,TE波とTM波の反射率の相違を利用して計算できた各層の誘電率は妥当な値であることがわかり,本システムの有効性が検証できた。
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